本日18時から視聴できるYoutubeのAC釣チャンネルには利別川の下流域の釣りです。
アメマスは岸から10m以内で小さな湾同に溜まる鮭稚魚を追いかけまわしてライズします。
そんな場面を探しながら僕は釣り歩いています。
僕の釣りシーズンスタートは毎年3月、この川から始まることが多い。
川から降って海へでるアメマスを求めて日本海と太平洋岸の河川を彷徨って時には海でアメマスを釣ろうとする。
降って行くアメマスは汽水域付近で銀毛して海水対応となるので幾分海のアメマスに似てくるがまだまだその体色は川のものだ。
だが同時期に海へ降って行くサケの稚魚を捕食することで見事なくらいに太く強いアメマスへ変貌する。
それを狙うのが北海道の河川で始まる雪解け・・雪代の前後期間となる。
おおむね3月の中旬から後半でピークを迎えて雪代を間に挟んで4月から中旬にかけては海や河口域がメインとなる。
僕は川釣りが好きなので3月に出かけることが多い。
その川は道南の名流「後志利別川」。
今金町と瀬棚町の街中を流れる川で水質では何度か日本一と称されている。
上流はピリカダムがあってニジマスやアメマス、川ではヤマメやイワナも釣れる。
僕が入渓するのは主に瀬棚の兜野橋前後のどちらかと言えば下流域になる。
禁漁河川の支流「真駒内川」が注ぐ区間だ。
すでにこの川へ通うようになって25年以上になるから阿寒湖よりも経験値はあるほうだ。
以前に比べて「釣れる、釣れない?」というとそれは後者であることは間違いないがそれはどの地域でも同じ現実だと思う。
一番は環境の悪化だ。
この川でも気になるのは川底の変化だ。
とにかくどこもかしこも浅くなって砂が増えて、泥が増えている。
思わず足を踏み込んで胸まで水に攻められて流される恐怖を味わった川も今は腰までウェーディングすれば渡れてしまうんじゃないかと思うこともある。
実際にはトルクのある重い流れでは難しいのであるが、立ち込みが容易になったのは間違いない。
それに伴ってアメマスの付く場所も相当に変わってきたように思う。
当然それはベイトの鮭稚魚の落ちる場所が変化したことを意味している。
左右の岸にあった弛みや淀みなど緩衝となる場所がなくなって一気に流心へ流される場所が増えているのだ。
従ってヒットゾーンが川の真ん中であったりする。
もちろん川の中央にも流れの強弱があるのでその弱い部分がポイントだったりする。
水深も浅いのでヘビーなシンクラインは必要がない場合も多い。
僕の場合は阿寒湖同様にフローティングボディにシンクティップで十分に釣りが成立している。
下手に底を流すと木や枝、諸々のものを拾ってしまう。
遠投や重い流れに対抗するためにハードなダブルハンドタックルも不要でスイッチロッドやシングルハンドのような軽微なタックルで釣りが可能になった。
だからと言って釣りが簡単になったかと言えばそれは違う。
僕のようなキャスト下手でも届く範囲に鱒がいるので誰でも容易に鱒へアプローチができる。
初期は群れにさえ当たれば容易に数釣は可能だろうと思うが徐々にシーズンのピークを迎えてゆくとハイプレッシャーとなってフライを食わなくなってしまう。
毎日毎日釣り人が同じ場所に立ち込んで同じようなフライを投げ入れて行くのだから当然と言えば当然だろう。
何せ食っているのは鮭稚魚オンリーだから本物も増えてくればなおさら難しさが増す。
ただし断言はできないがこの川ではアメマスを数多く釣りたいと思うフライフィッシャーは少ないように思う。
僕もそうだがなんとか1本のトロフィーである最高のファイターアメマスを釣りたいと思っているはずだ。
この川にはそんなアメマスが存在しているからだ。
僕の拙い釣史の中で最も強烈な印象を残したのが利別川のアメマスなのだ。
今から15年くらい前になるだろうか、釣友とこの川の中流域でそれは釣れた。
全く釣れなかったその日は4か所ほどのポイント釣ってお昼近く、そろそろ帰る時間が迫る頃だった。
サクラマスが良く溜まるポイントがあって地元の連中が集まっては餌釣りをしている場所の下流だった。
腹立たしくて彼らが餌を放りこむ付近のそばまでウェーディングして彼らの方向へフライをキャストして邪魔してやるつもりだった。
フライラインを10mほど出してキャストの為にラインを剥がそうとしたがフライラインが動かなかった。
「くっそ~根がかりかよ」意地の悪い考えを持つとダメだなぁーと思いながらラインを思い切って引いた。
すると急に生命反応と共にフライラインが走り始めた・・リールのドラグも緩めたままなので一気にラインが出ていった。
指で止めようとしたがラインを支えていた中指に力を入れると擦れて思わず「痛ぇ~」。
それでも人差し指も動員して止めにかかったが全く止まらかった。
今までリールに巻いていたラインがこれほど出て行った経験はなかった。
ほぼ真上に上げたロッドティップから出ているラインと川面が作るとても長い三角形の長辺がこれほど見事に僕の目に映ったことも初めてだった。
そして下流のその先でその鱒は大きくジャンプした。
僕はてっきりニジマスがヒットしたのだと思った。
そこから僕は後ろを振り向き上流にいた釣友を大声で呼んだ。
止まったラインが緩み始め鱒は上り始めた。
登ってくる鱒がばれない事だけを祈って必死にリールを巻いた。
あまりに強くアドレナリンが出ていて興奮の度合いも相当だったのでどのくらいの時間を費やしたのかは分からない。
ただ寄ってきたその鱒がアメマスだと分かってかなり驚いた。
アメマスもあれだけ高くジャンプするのだと初めて知った。
とてもじゃないがインスタネットに入る気がしなかったのでネットに入れることは諦めて岸へ寄せてハンドランディングをした。
大きく膨らみ曲がった鼻、鰓付近から続く虫食い斑紋は尾鰭まで続いて大きく崩れてところどころにドーナツ柄が刻まれていた。
僕の手と同じくらいの虫食い紋様の尾鰭の厚さは5mmほどあったのではないかと思う。
このダブルハンドのグリップ長は60㎝、そこから考えると65㎝くらいだったと思う。
このアメマスを釣って以来60㎝越えは何度か経験しているがこのアメマスほど強く印象に残る鱒は現れていない。
その後もこの釣り、この鱒に会うべく毎年3月はこの川を楽しんでいる。
そしてそうあの3月11日もこの川で釣りをしていた。
揺れこそ感じなかったが川に立ち込んでいたらパトカーが巡回して津波の危険性があるから川から出るようにとスピーカー越しに告げられた。
その日は全くと言っていいほど当たりもライズもない・・沈黙の日だった。